チョコラ

画像

 ナイロビのわが社の作業場には、ここ数年の注文やサンプル作りでたまりにたまったバスケット材料や、布切れ、皮の切れ端、埃まみれの数年前のサンプル、設計書の紙くずなどが、グニアと僕らが呼んでいるプラスチック繊維のズタ袋にいくつも入って、うずたかく積まれています。
 何せそれらは決してゴミではなくて、かつてはシーズン商品の第一号サンプル(苦労の末に仕上げたものばかり)だったりするものだから、なかなか捨てられないのです。でも、何年も経って袋を開けると、埃まみれで色は変色しているし、部品はどこかに使い回したりして、ハンドルの一本がなくなったり、飾りがはずれていたりで、とても売り物にはなりません。それに長い間袋に詰め込んであるものだから、原型をとどめないほどのヨレヨレになってしまっています。
 部屋もそれほど広いわけでもないし、いつかは処分しないといけないんだから、やっぱりこれらは処分しましょうということになりました。日本の事務所なら、こういう時は、トラックにどかどか積み込んで、近所の公営焼却場にもっていって、重さを計ってもらって、ボンと捨ててしまえば、あとは量に応じた料金を支払えばおしまいです。
 ところがここケニアでは、ゴミを捨てるといっても簡単ではありません。処理業者はいるけど何日も前から予約して、来てもらって、法外に高い料金を払って持っていってもらう。それらのゴミはどこに行くかというと、郊外のスラムの向こう側あたり広がっている、ゴミの墓場みたいなところにボンと捨てられるだけで、とくに埋め立てるだの焼却するだのということはないようです。
 この日もそんな話をしながら、業者を呼ぶのは時間もお金ももったいないのでどうしようかと、話をしていたのですが、うちのカンバ族の助っ人の一人が、「そりゃわけないよ」といって、いくつか袋を担いで階段を下りていきました。
 しばらくして手ぶらで戻ってきた彼にどうしたのか尋ねると、「表を見てごらん」というので、テラスから外の雑踏を見ると、なんと数人の子供達が、ワイワイ言いながらわれらのズタ袋を抱えて行くではありませんか。チョコラといわれるホームレス浮浪児たちです。
 チョコラの説明をすると長くなるので、省きますが、彼らは親がいなかったり、いてもろくに育ててもらっていなかったり、あるいはちゃんとした家の子なのに、普通に学校に行くよりチョコラ仲間の集団に入っていた方が楽しいのでそこにいたりと理由は様々ながら、集団で野宿生活をしている子供達です。
 ここ数年の政府の方策でかなり以前に比べたら、その数は減ったものの、僕らが仕事をする下町にはまだ相当数のチョコラ達がいるようです。かれらはとにかくしたたかです。今日の子供達のように、廃品回収業で生活をしているのもいれば、集団でかっぱらいや、強盗をする強面の連中もいます。しかし概して、仲間同士の結束は強くて、子供同士の面倒見はそうといいいようです。ろくでもない親元を離れて、その集団の中で生活することを選ぶ子供達がいるもの頷けるらしいです。
 僕らが3階の作業場から見送った彼らも、実に楽しそうに、袋を抱えてどこかに持ち去っていく姿が印象的でした。大きい子が大きい袋を担いで、小さい子が小さいのを持っていく。不謹慎ながら、ズタ袋よりそれを抱えている子供達の方がゴミののように見えるのがおかしかったです。
 うちの工房の連中もそうとう貧乏な人ばかりだけど、その彼らが、子供達を見送って、嬉しそうにしていたのは、われらの第一号サンプルが彼らの生活の足しになってくれればいいなあという共通の思いがあったのでしょうか。僕らは、子供達の姿が遠くに見えなくなるまで、見送りました。

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 0

この記事へのコメント