ボボデュラソ

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 毎年、秋口から11月頃にかけて西アフリカのどこかにいるのですが、今年は師走も押し迫ってまだうろうろしております。バスケットの出荷を少しはやめたのと、秋口に別の場所の仕入で渡航していたためです。アフリカをうろうろするのが仕事とは言え、本当はこのクリスマスの頃は家族と一緒にいて、日本的な恒例行事になったクリスマスを子供達と過ごしたいのが希望なのですが、そんなにうまく希望は叶いません。

 ボボデュラソ、いつも通過するだけのブルキナファソの小さな町で、今回は仕事がありました。とある日本の取引先さんのご指定で、ローカルの太鼓職人さんからジェンベを無事に日本へ入荷させるのが仕事でした。出発数ヶ月前から、現地に根回しをして、前金を支払って注文の太鼓を製作してもらっておく。現地で出来てきたよという報告にあわせて、その工房へ実際に足を向けて、検品してよければコンテナ出荷の積み込み地まで陸送する。そんなに難しい仕事ではありません。現地にフットワークの軽いスタッフがいてくれれば、まず問題なく事が運ぶ段取りでした。

 ところがご想像通り、アフリカはそんなに簡単には仕事を進めさせてはくれません。まず、日本の取引先さんのご指名の職人さんというところで、罠が仕掛けてありました。アフリカで誰かを紹介してもらったというのならいざ知らず、日本でそれも長く懇意にしてもらっている取引さんが特別に紹介してくれた情報と言うことであれば、まずそれを疑うと言うことはありません。100%信用して、前金をたっぷり支払い、仕事がスムーズに進むように段取りをするのは当然でしょう。現地のスタッフには注文時に工房に行ってもらって、その商品の写真を撮って、本人さんの顔写真もついでに撮影し、それを日本に送らせ、この人物で間違いないか、その商品に問題はないかと再三、念を入れて仕事が始まりました。ここまでは何も問題はありませんでした。品物は僕が現地に到着する2週間も前に、全部準備は出来ているという報告を受けて、ボボデュラソの向かったのです。それなのに、それなのに・・ はるばるバマコから10時間近くバスに揺られて、ボボデュラソに到着し、その職人さんのうちに行ってみたら、ずらっと仕上がって僕らの到着を待っているはずの太鼓がないのです。仕上げもしていない不揃いのボディが数台壁際に並んでいるだけで、それらは写真であらかじめ見ていたのとはまるで雰囲気が違うし、数も全然足りないし、それもうち用に新たに作った感じはなく、もうだいぶん前からそこに置きざらしになって埃をかぶっている感じがありありと見られます。え?なにこれ?とすぐにご本人に聞くと、いや品物はここではなくて、ショップの方に置いてある。今日はもう夜遅いから、いまからショップに行くのはたいへんだろう。それとまだちょっとエッジ削りの仕事が残っているから、よければ明日、ワガドグまで全部はこびましょう・・ なぁんだ、そういうことか。品物はお店の方にあるんだ。確かにわれわれは、バマコからバスでやってくる途中、ボボデュラソに立ち寄って品物を回収して、ワガドグに向かうはずだったのが、バスが遅れて到着がとっぷりと日も暮れてからだったのです。僕は素直に、予定時刻をずっと遅くなったもんだから、店に行けなくなったのは仕方がない。まだ少し仕上げが残っているそうだし、ここは言葉に甘えて、明日ワガドグまで持ってきてもらおう(ボボデュラソ-ワガドグ間は350㎞あります)・・なんてことになってしまいました。この時点では、まだわれわれは暗示にかかっていたようです。
 そして、翌日、他の仕事に忙殺されて、太鼓屋から連絡が来ていないのに気が付いたのが夜になってからでした。すぐに連絡してみると、ちょっとエッジ削りに手間取っちゃって・・って言う返事。このあたりで、頭の中に?マークが点滅し出します。エッジ削りにそんなに時間がかかるかな? そして翌日、向こうからは連絡がありません。またこちらから電話しても同じような返事。これが4日ほどつづきました。やれやれ・・・ やられたわい。

 誰かの紹介というのはダメですね。人物を見ないで仕事に取りかかってしまう。普通ならそういうことはありません。まず商品を見定めて、その製作者は誰かを徹底的に洗い出します。ルーツにたどり着いてから、交渉して、値段と仕事の出来る人間かどうかの品定めを経て、注文に入ります。ここはもう眼力に頼るしかないのですが、この道15年で、ある程度、商人を見定める眼力は養ってきたと思っています。ところが今回は、この行程をすべて省いて、いきなり注文に入ってしまいました。失敗して当然です。

 この道15年の対アフリカ商人の私としましては、債権回収に関してもある程度の経験を持っています。開き直っている相手を前にいかに有効に、こちらの損害を挽回するか。これは一人ではなかなか難しい仕事なので、いつものように現地の相棒とチームを組んで、対処することにしました。それぞれ役目があります。僕は徹底的に分からず屋で粗暴なアジア人に徹します。でもう一方相棒は、穏やかで社会的な常識のある収め役のアフリカ人をやります。
 ボボデュラソの店に着くと、案の定、品物はまえのまま、若干台数は増えてるけど、エッジなんて削っていないし、何より、前回見た時に確認したものがそこに見あたらず、違うものとすり替わっていて、太鼓屋の言っていることがまるででたらめだったのがバレバレでした。もう速攻、太鼓屋に詰め寄って、お前みたいな嘘つきと仕事なんかしたくない。品物なんかもういらないから即刻前金を返せ。返さないと、このまま警察行きだ。オレが黙ってひきさがると思うなよバカヤロー。と隣近所がみんな集まってくる剣幕でまくし立てますと、あいてはのらりくらりと弁明を始めるんだけど、こっちは聞く耳を持たない。だんだんとお互いがエスカレートして野次馬まで発言し出す頃になって、物わかりの言い相棒が間に立ちます。
 「こんな話をしにここまできたんじゃないじゃないか」僕がまず説得され、方や相手方にも「あんたも忙しくて注文がこなせなかったのはよくわかる。でも多少の非はあると思うよ」なーんてプライドを傷つけないように持ち上げていくと、渡りに船で、責められている太鼓屋はこの助っ人を大頼りにし始めます。そこで初めて折衷案が出て、全額回収がダメなら、じゃああるだけの商品で返してもらうしかないでしょう・・みたいな話になり、野次馬の賛同をこちらのものにしていきます。僕の方も、最初からそのつもりのない現金回収の要求は取り下げ、じゃあ金額に見合った品物で全部回収するというところで、あらためて店の中を見回し(実は来た時に一瞥して何を戦利品にするかはもう決まっているんだけど)、もったいぶって金額に見合う分だけの品定めをして相手に提示します。多少ここですったもんだはあったけど、なんとか一旦は、完成品かボディだけかは関わらず、ありったけの店の中の太鼓を回収させてもらうということで話はまとまったのです。

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 ところがここで出てきた、新たな登場人物。大柄で屈強そうな男。おいまて、この店の太鼓はオレのものだぞ。何やってんだ、お前達。と話に割って入ってきたのです。誰これ?なんなのこの人?よくよく聞くと、本当にこの御仁が、太鼓のオーナーらしい。じゃあ、今まで話していたこの太鼓屋は誰なの?

 結局わかったところでは、今までやり取りしていたオッサンは確かにここの太鼓屋のあるじだけど、金がないものだから、そのへんのほんとうの太鼓職人から太鼓を預かって売っているだけで、商品には何の権限もないただの貧乏オヤジだったわけでした。やれやれ。
 やっと、それでからくりがつかめました。これだけ時間をかけて品物が揃わず、毎回言うことが違っている。彼もつじつま合わせにたいへんだったわけです。

 それはいいけど、またしても相手を替えて、同じ話の蒸し返し。今度はこの屈強な職人と、貧乏オヤジと、僕と助っ人、それに取り巻きの野次馬と。日はとっぷり暮れて、疲れ果てるまで話し合って、やはり全部回収する。その代わり、今回の品物が評判よければ、次回は何倍もの注文になるだろうから・・などということで決着しました。

 アフリカ人との交渉は、押したら引くこと、引いたら押すこと、これの飽くなき繰り返し。あきらめたら負け。最後はあんたはオレの兄弟。オレの先祖はあんたの先祖。そこに話を持っていけるかどうかにかかっています。こういう事です。

 

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