アフリカ人の物言い

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 ものの言い方。これは僕にはたいへん頭の痛い話のネタなのです。何を隠そう、僕は非常にものの言い方に欠陥のある人間で、こういうことをそういう言い方で言ったら、どういう事態になって、相手はどんな風に感じるかということが、基本的によくわかっていません。自分に発せられた言葉には敏感なくせに、相手には容赦なく好き勝手なことを言ってしまう。実にたちの悪い性格をしているとわれながらつくづく思ったりします。

 ある日、アフリカの友人と仕事上の話をしていて、自分の部下なり仕事仲間が、何か盗みをはたらいてそれが自分の目にとまったとき、どういう態度を取るかというかということで感心してしまったことがあります。まず、場所がアフリカのケニアで、かなりの貧困層のたまり場になるクラフト業界なので、ちょっとした品物の盗難事件、商品の横流しは日常茶飯事ということを念頭に置いてください。そういう中でも、長年仕事を一緒にやってきて、手放しに信頼していた仲間が、ある日材料をひとつまたひとつとくすねているのに遭遇する。品物のの数がいつの間にか減っていて、ある日こっそり部屋の隅から監視していて、不審な挙動を発見して、問いつめたところ盗みを白状してポケットのなかに突っこんだ盗みの品を差し出した。さあ、こういうときあなたならどう言う?という話だったのです。もう僕などは、そんなことは間違いなく非日常的なことだから、まずは気が動転して、盗んだものがどんな些細なものだろうと、自分を裏切ったことを猛烈に非難して、相手の話を聞くのはおろか、一方的にわめき散らして、さんざ罵ったあげく、給料も渡さず懲戒解雇処分。それで気が済まなければ警察沙汰。もし相手が逆に食ってかかってきたりしたら、もうどんな攻撃を仕掛けるかしれたものじゃないだろうと、まずは自分の性格を分析して想像したのですが、これには話し相手も呆れてしまって、そんなんじゃケニアで人を雇うことなんてできないよと軽く笑われてしまいました。
 じゃあ、彼ならどうするのか。まずは相手の目をじっと見て、自分はほんとうに悲しくてこんなことで長年の友人をなくすのがどんなに辛く思っているかを切々と語りかけるんですって。そして、今まで盗んだものをとにかく全部返すように説得して、君はこの盗みを家族の貧しさからやむなく行ったわけで、盗みをしなければやっていけないような賃金しか払わなかった自分の非を詫びるんですと。たいていの相手はその情にほだされて、全部ではないにしても過去何回分かの盗んだ品物は返してくるので、そうすれば、静かにもうこれ以上もめ事を続けないでいいように、お互い袂を分かとうという話に落ち着けるのですと。そして結局彼はクビになるんだけど、警察沙汰にもならないうちに被害は最小限に抑えられて、さらに怨恨を後に残さない。
 これを聞いて、もう僕は唸ってしまいましたね。こんな聖人君子みたいなことができるかいな、とは思うんだけど、彼にとっての実利は被害を最小限に抑えることと、敵を作らないで商売を円満に進めることなので、実利はしっかり守っているのですよね。僕なんかの数倍は賢くて世間慣れしているのには頭が下がりました。

  ただ後から考えてふと思ったのは、アフリカ人はlこのように相手と大きなもめ事を起こさないために、僕らの想像以上の気を使って生きているのに、現実のアフリカ国家の内外では、もめ事が絶えず、常に争いばかりしているのはどういうことなんだ?と、別の疑問がわいたことです。結局アフリカ文化というのは、もめ事が起こることには熟練しているものの、もめ事を起こさないことには慣れていないのかなと思ったりもしました。そういう意味では、日本社会というのはぎくしゃくしているように見えて、もめ事を事前に防ぐということには細心の注意を払うのだけど、今度はほんとうにもめ事が起こったときには、たいした解決手段をもたないということなのだろうか?? まあどっちがどうともよくわかりませんが、どっちもどっちなんでしょうなぁ。

 自分の問題に戻ってみて、ものの言い方はやはりないがしろにしてはいけない重要課題であるというのがよくわかりました。たかが物言いじゃなくて、ものの言い方、相手への接し方こそが問題の本質そのものなのですよ・・と彼に教えられましたね。深く反省・・


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